新世紀エヴァンゲリオンパロディFF いつかなんて日はいつだ ーエヴァンゲリオンの著作権はGainaxに帰属します。そういうもんです。  このスレの住人に持ってる奴なんていません。どんなに欲しがろうが手には入りません。  こんなこと書いてたら何故か昔付き合ってた彼女を思い出しました。ー 初号機がどうのと前回言ってましたが取り消し。 ラブシンジネタで行きます。 カップリングはまだ秘密です。 ちなみにカヲル君は出しません。 801ネタは苦手なんで(w あとこの作品ではマヤその他が本編からは想像できないような別人へと変貌する予定ですが、 あんなスレタイがついたスレのFFですのでできれば冷静に流してください。 どうしても耐えられねー場合は抗議のレスどうぞ。 それで書き方変えるつもりは今のところないですが(ォィ ではメリットゼロな自慰ファンタジーの始まり始まり。 いつかなんて日はいつだ ファースト・ミステイクー なぜ、僕なの? ~学校という名の地獄~ 鈴原トウジは思わずたじろぎながらも友人の顔を見て言った。 「オイオイセンセ、派手にやられとるがな。今回はなにやらかしてそないなったんや?」 彼の問う「そない」とは碇シンジの顔の半分を覆う大きなアザのことである。 「よくわからないんだ」 シンジが肩をすくめて答えた。 「昨日夕飯の支度してたらアスカが風呂から出てきて。そしたら突然目の前が真っ暗になって、 なんかバカとかヘンタイとか言ってる声がうっすら聞こえて、気がついたら台所の天井を見上げてた」 彼は触れていないが、この事件の被害は夕食にまでは及んでいなかった。幸い目が覚めた直後に サルベージすることができた。ペンペンの計略を防止することもできた。 秋刀魚を焦がすと同時に酔っ払った温泉ペンギンに暴れられるというダブルパンチは辛すぎる。 脇にいた相田ケンスケが、起動していたネットハックソフトから目を離して対話に割り込んできた。 「ミサトさんは何か言ってた?」 突如彼のPCが高らかな効果音を発した。彼が目をつけていた学校のリソースへの直結作業が終了 したことを告げる音だ。彼によれば軍のメインフレームに侵入する場合、ここを通せば経路を隠蔽 できるらしい。常に第壱中学校校舎のサーバーに信号を発しているというのだから驚きである。 ただ、先日学校の職員室が戦略自衛隊に爆破された際は、彼も少々責任を感じざるをえなかったようだ。 シンジは腫れた頬をおもむろに撫でたが、まだ痛むらしく小さく呻いた。 「今日の昼にリツコさんに診せに行くって」 普通の医者のいる普通の病院に行きたい、という彼の望みは保護者にあっさりシカトされた。というか、本人は その件についてはむしろ喜んでいたようでもあった。 聞こえた名前にトウジの耳が元気に反応した。 「あの金髪のべっぴんさんのことかぁ!?」 一度しか若き科学者とは会っていなかったものの、彼の思春期の脳にははっきりと焼きついていた。 「り、リツコさんのこと?」 シンジは「リツコが魅力的か」と聞かれれば認めるほかなかった。ただそこまで深く考える暇がなかったのだ。それ 以上に彼がリツコとともにいる時気にしていたのは無事生還することであった。伊達に彼女がネルフ職員にマッド・ サイエンティストのレッテルを貼られているわけではない。 「畜生うらやましすぎるぞシンジィ〜!」 ケンスケは人目も気にせず泣き始めた。別にどうでもいいと思ってる奴に何度も当たり目ゲットされているのが 悲痛で堪らなかったのだ。 「エヴァに乗れて。ミサトさんと同居できて…」 感情を抑えきれなくなったケンスケの嗚咽は激しい泣き声へと変わっていった。 空、というか天井を仰ぎ見ると、シンジはため息をついた。周りが同情の色を見せる可能性は限りなく低そうで ある。 「じゃあアスカに言ってみてよ。きっとケンスケに協力するよ」 普通の生活の為なら彼はいつでも立場を交代するつもりでいた。巨大な生物兵器をいやいや操作させられ、 アル中のズボラな女と狂暴な精神異常者と同居させられ、冷淡なクソ親父の下で働かされるくらいなら。 *** 「そしたらアイツ自分のチン―……」 少々オーバー気味に脚色を交えながら昨夜のヘンタイバカとの遭遇について語っていた惣流アスカは、 なにやら教室内の空気がギスギスしていることに感づいた。 「ヒカリ、さっきから他の女子にジロジロ見られてるけど。何で?」 「わたし?」 洞木ヒカリは辺りを見渡した。多くの女性陣の表情には暗いさっきの色がうっすら見てとれる。その視線の群れを たどると、真の目標を補足することに成功。そっと耳打ちした。 「みんなが見てるのはアスカ、あなたよ」 ヒカリの発言に驚いたアスカは思わず立ち上がり、大声を上げていた。 「なーーんですってェ!?なんでそーなるのよ!?」 アスカの考えられる限りでは、自分は皆から尊敬されしたわれていた。皆のアイドルだった。皆は自分を別格の 台座に置き、ひたすら讃え崇め奉っていた。だが超一流のEVAパイロットとしての自分の知識や美貌や技能を ねたんでいるのなら、それはそれで納得がいく。自分が完璧超人なのは自分の責任じゃないし。 次に驚くのはヒカリの番であった。 「まさか知らないの!?」 アスカの気性をよく知っていたヒカリは、無意味に非難しまくるよりも機転を利かせる方を選んだ。 「アスカ、大学卒のエリートでもやっぱりそういうところは普通の中学生ね」 「そういうところ」はね。 「じゃーあ…みんな何にムカついてるワケ?」 アスカは隠し事が大嫌いである。自分の身の回りで起きている事は何だろうが確かめないと気が済まない。 「碇君のこと。」 ヒカリはそう答えた。言わんとしていることをアスカに納得してもらおうと、声色にそれらしい ニュアンスを込めて。  アスカは納得した。意味を履き違えて。 「バカシンジ?今度は何よあのヘンタイ」 完全にケンカ腰である。 「一発殺してくるわ」 とりあえず少年を席から引きずり出してお仕置きをしようとアスカは立ち上がった。 ヒカリは素早くアスカの腕を掴むと椅子に座りなおさせた。 「違うわアスカ、碇君は何もしてない。問題なのはあなたがこれから彼とどう接するかなの」 説明を受けたアスカは唖然としていた。今聞いた言葉が信じられなかったのである。 「なんの話よ、ヒカリ?アタシはシンジとは極ふつーのつきあいじゃない」 アスカはそう信じてはばからなかった。むしろシンジに甘すぎるんでないかと思っている程だ。 今度はヒカリがアスカの言葉に困惑している。 「『ごくふつう』?じゃああのほっぺたの大きなアザは何よ?」 「スケベなぼうやが待ち伏せしてたのよ。他にどうしろっていうのよ」 アスカは言い切った。選択肢は1つしかなかったということぐらいなんでわからないのかしら。 「でもさっき聞いた話だと、タオルが落ちたときは碇君は全然そっち見てなかったんでしょ。   それでも殴ったって…」 ヒカリは自分がアスカの立場ならどんな反応を示したか想像してみた。台所で碇シンジ君と全裸で 二人きり。脳内で可能性を拡大させる14歳の少女の左の鼻の穴からは一条の血が垂れていた。 「だーかーらー、いったい何なのよ?」 他人の反応は一切気にせずアスカが言った。 「女子のみんなは何が気にいらないの?」 アスカ自身未だそれに納得できておらず、ヒカリはまたそれをキッチリと説明する必要があった。 碇シンジとの接し方の何が問題だというのか。理解する必要があった。 「みんな…碇君が好きだから…」 ヒカリはためらいがちにそう言うと、自白したことへの余りの恥ずかしさに頭を下げた。 「みんな……いかりくんが……すきだから?」 ゆっくりとアスカは繰り返した。 「シンジをぉぉ!?みんな頭オカシイんじゃないッ!?」 アスカの心の中でパニック屋がビジネスを開業し始めた。 -その頃、アスカの心の中- //アスカ(小)突然講堂の舞台上に登場。周りには同クラスの皆がいる。// 「わ、私は正気よ」 顔が徐々に紅潮してきているのを隠そうと、ヒカリは素直に答えた。 「な---って、ちょっと待ってヒカリ。あんたマジであの鈍感が好きだっての!?」 アスカの胸の中ではパニック屋が盛大な貿易を開始し始めた。一般的な表現で 「胸が締め付けられる思い」ともいう。 「あのサル男が好きかと思ってたけど…成長したとは言い難いわよ、それ」 //アスカ(小)、3バカトリオの他2名を舞台から蹴落とし、シンジ(小)の獲得に向かう// ヒカリは応答に頷きつつも不機嫌そうな趣きだ。 「鈴原君のことは…好きよ。でも考えてみると…碇君もなんだかほっておけないの」 そう言う彼女の目は霞んでいる。 「料理も掃除もそつなくこなすし、いつも誠実で他人に優しいし…」 そしてよだれをたらしながら当の少年を一瞥すると、こう言った。 「・・・ も っ さ か わ い い じ ゃ な い 」 //先にヒカリ(小)がシンジ(小)によりかかる。悔しがるアスカ(小)// アスカは身を乗り出すとヒカリを揺さぶって幻想から解放した。 「いーいヒカリ、あの弱虫で意気地なしなヘンタイボーヤになぜ近づくべきじゃないか、まで  いちいち説明する気はアタシにはないわ。でもね、これはあなたの為なのよ。バカシンジから 離れてりゃ、よっぽど幸せな生活遅れるわ」 アスカは懇願した。なぜ自分がそんな講堂をとっているのかはさっぱりだったが、そうする必要性を 感じたのである。 同時に不自然さも感じつつも。 //アスカ(小)、シンジ(小)とヒカリ(小)を指差しながら地団駄を踏んでいる// 「じゃあ、アスカは好きじゃないの?全然?」 2人は気付いていなかったが、現場にいた周りの女子達は、アスカのほんとの心中を 探ろうと興味津々で聞きいっていた。 「好きぃ?そばにいられるだけでむかっ腹が立つわ!!」 瞬間、2年A組のその他女子生徒の中から沸き出た拍手と歓声にアスカは面食らったが、 話し続けた。 「アタシがあの唐変木と同居してる理由はただ一つ。ネルフに強要されてるからよ」 「そう。じゃあ私が彼の分のお弁当作ってきても問題ないわね」 早く獲物をゲットしようとヒカリが切り出した。 //ヒカリ(小)シンジ(小)にフルコースの昼食を提供。シンジ(小)即座に食べ始める。 彼の温かいコメントは少女を喜びのあまり失神させる// アスカはさもどうぞどうぞという風に手を振った。 「えぇもうそりゃあ・・・・・・って・・・お弁当?あのバカに?」 前述のパニック商社はとうとう小売店まで開業し始めた。 「うん・・・結構長い間考えてたんだけど、一応アスカに聞いといた方がいいかなって」 ヒカリはアスカを敵にまわしたくはなかったが、早いうちに行動しなくてはならなかった。 先日耳にした「噂」が事実の場合なおさらである。 「なんでアタシに聞くのよ」 //シンジ(小)、唐突にヒカリ(小)の唇を奪う。ヒカリ(小)一気に溶けて虚空に消える。 一連の光景をただ呆然と見つめるアスカ(小)// 「うーん、実はね、アスカが来る前は、碇君と綾波さんの仲が怪しいんじゃないかって 言われてたの」 実際シンジは寡黙なアルビノの少女に気になる視線を何度向けていたことだろう。 //レイ(小)登場。いたいけな紅い瞳が目標を補足する。// 「…ある意味正論ね…」 拳をわなわな震わせながら皮肉っぽくアスカが言った。 「お似合いなんじゃないの。バカなガキと優等生なお人形、ね」 ファーストとサードがお互いに抱き合っているイメージ画が頭をかすめた。 不快感は募るばかりである。 //レイ(小)、シンジ(小)に自ら突進、そのまま押し倒す// 「みんなピリピリしてるのは、まあ、そういうわけよ。要注意人物が綾波さん   だけだったところにあなたが出てきたんだから」 そうヒカリが言うと幾人もの女生徒たちがこくこくと頷いた。レイやアスカさえ いなければ碇シンジは自分が獲得していたろうに。だれもがそう思っていた。 「アタシらが影でつきあってるみたいな言い方しないでよね…とにかくヒカリ、   アタシは息を吹きかけられるだけでもアイツを撲殺したい気分になるの。大マジよ」 己の心の奥底での叫びを無視してアスカは言い切った。 //急に舞台消滅。アスカ(小)独り何もない空間に浮かんでいる。// 「ありがとうアスカ」 親友の理解を得たヒカリは微笑みかけた。 アスカは既に壁の方を向いていた。 「お互い様よヒカリ」 //アスカ(小)虚空の渦へ落ちていく。アスカの頭にその絶望の叫びが響く。// *** <委員長が碇君の好意を得ようとしている。いけない。> サードチルドレンがネルフに到来してからの数ヶ月、レイはいつの間にか彼の行動を 日に日に観察するようになっていった。初めは義務の念からだった。碇司令が息子の 苦しみに一切無関心に見えようが一応は司令の子である。 彼女が第5使徒から彼を守ると誓った時からそれは変わった。「サードを守れ」という 命令が取り消されたわけではなかったので、レイはシンジの安全を確保しようと、彼の 監視をそのまま続けた。 いつの間にやら、レイは彼の友情に対する内気さを快く感じるようになっていた。 並の快さではない。 <彼の配慮が心地良い―私が彼の心のたったひとつの焦点になる> レイは見識に欠けてはいない。ほとんどの人は、その見た目から「ものごとを知らない娘」 と思うだろう。彼女は学校の女子たちの多くが初号機パイロットに夢中なのは知っていた。 何の脈略もなくいきなり彼に跳びかかるような連中もいるのだから見まごうはずもなかろう。 そして現在は委員長がアタックをしようとしている。 <シナリオを予定より早く実行する必要がありそうね> レイは様々な込み入ったイベントを連想した。割かし簡潔に要約できるものである。 1‐碇シンジ 2‐綾波レイ 3‐マンションの自室 4‐ドアの新しい鍵 5‐閉じ込められた2人 6‐以降、思うがままに遣りたい放題 レイは無意識のうちに2人が全裸である場合を好ましく思った。 <遣りたい放題。  遣りたい放題。  遣りたい放題。> 窓の方を見つめるレイ。ガラスに反射した碇シンジの像を凝視する彼女の頬は桃色に 染まっていたが、誰一人それには気がつかなかった。 <これが、最高にハイってやつなのね> *** 霧島マナはその他全ての物体を無視して彼を見つめ続けていた。「私の」シンジくんがあの ドイツのチビ砂利にほとんど毎日いびられているなんて。彼の安否に恐怖して過ごしたのは 1日や2日ではない。 だが全てはすぐに変わろうとしていた。「あの人」が上手く事を運んでくれれば。あの人とはとある 金融機関の重役の事である。彼のマネジメントにおける決定権はネルフ総司令のそれに迫る ものがあり、実際ゼーレの財政上の権限を任されていたのは彼でもあった。 実は彼は過去に家庭内でのトラブルが原因で妻に一人娘を連れられ逃げられていた。そして 孤独な日々を送っていたある日戦自の訓練の視察時、たまたま目に入った訓練中のマナが 妻とともに失踪した娘に瓜二つだったのである。それから2人はまるで本当の親子のように接する ようになった。もちろんそうしてくれるよう頼み込んだのは彼である。 随分とご都合主義な話にも聞こえるが、実際にあったのだから仕方がない。 無論、重役に対する同情だけでマナは頼みを飲んだわけではなかった。彼は普通のやもめ暮らしの 父親に同じく、一人娘(義理)の為なら何でもした。そこでつい数日前、彼にマナは「私の幸せは、 碇シンジ君の幸せと赤い糸で繋がっているんだよ」と伝えていた。 最初はさすがに彼も要求を受け入れようか迷ったが、マナが涙ひと筋流しただけであっさり願いを叶えて あげると誓った。 「シンジ君…もうあなたはあの小悪魔の元で苦しむ必要はないの…すぐに楽しい日々が来るわ…」 シンジが自分と同居するようになったらまずどうしよう…とマナは考えながら一人でクスクスと笑っていた。 <あぁ…シンジくん・・・もう少しで、あなたが…あなたの全てが、私のものに…> *** 「ぶわァァァァッくしゅゥゥゥゥ!!!!」 ケンスケは思わず飛びのいたが、間に合わずシンジから見事なねっとりコーティングのプレゼントを 受け取らされてしまった。 「オイ、お前なぁ〜」 シンジは風邪でもひいたのかといぶかりながら鼻をかんだ。 「ごめんケンスケ…あんまりいきなりだったから」 トウジが陽気に彼の背中を叩いた。突然の衝撃にシンジは椅子から転がり落ちた。 「誰かがお前の噂話でもしとんとちゃうか?ま、これは妹の奴の受け売りやけどな」 付着した埃をはたき落としながらシンジは座りなおした。 「どうなの?妹さんの調子」 シンジは話題をケンスケに延々と頼み込まれている「エヴァ、使徒、ミサトさんその他」から 逸らそうと素早く聞いた。 トウジはシンジをヘッドロックに掛けると上腕二頭筋を締め始めた。 「お前が前見舞いに来てからはじょー機嫌や。おおきにな〜シンジ」 彼の妹は世界を救った巨大ロボットのパイロットのお兄ちゃんに会いたがっていた。そして トウジは彼女が望むものがなんだろうと、どんな手段を使ってでもかなえるものだった。幸い、 シンジは喜んで回復中の妹のお見舞いに応じてくれた。もし応じなかった場合は、彼が意識を 失うまで殴り倒して病院へ引っぱってでも連れて行くつもりだった。友情にヒビが入るような 行動は彼としても避けたいところだ。 「いいよ…ケガさせたのは…僕…みたいな…もんだし…」 彼は既に白目を剥いている。肺および脳への酸素供給量が徐々に減ってきているのだ。 シンジの境遇は露知らず、トウジはさらに力を加えた。 「もうええて!医者さんももうじき元気になる言うとるし」 「オイ…シンジ?」 ケンスケはなんか動きのない碇シンジのシ体をつついてみた。 死人のように白かった彼の皮膚の色はみるみるうちに健康体のものへと戻った。 「なに?」 ケンスケはラザロなパフォーマンスに目を白黒させながらも聞いた。 「あ、あのさ、最近委員長、怒らせたりしたか?」 「ううん」 首を横に振った。 「身に覚えはないけど…なんで?」 アスカの親友に自分が一体何をしたのか彼は心配になってきた。アスカに日課のごとく 尽きることのない罵詈雑言を浴びせられるだけでも十分ひどいのに、今度は他人が それに感化されたというのか。勘弁してくれ。 ケンスケは眼鏡を押し上げた。レンズに反射する光が不気味だ。 「…いや、明らかにお前を見てるんだが…」 「シンジにやて?」 トウジは思わず当の本人に掛けていた卍固めを解いた。 「…ああ」 トウジは教室を見回すと、数人その他の異物が目に入ったた。 「あ、霧島もや」 「綾波もだな」 空色の髪の少女を確認したケンスケが付け加えた。彼女の赤い眼は碇少年に釘付けである。 その目から心中をうまく読み取ることはできなかったが、何かに…飢えているように見えた。 トウジの大きく開かれた両目には不信の色があった。 「村上に…坂本に…  ってオイ!!!全員やないかいッ!!!!」 彼はシンジの方へ振り返った。どう見ても震えている彼がいた。 「お前女子全員に見つめられとるぞ」 ケンスケはシンジの肩をガクガク揺さぶり始めた。 「シ〜ンジ〜、お前一体何したんだよ〜!?」 「だから、何もやってないって!」 「ま、気ぃつけた方がええで…」 トウジが忠告した。 「あのクソ女の言いふらしとること、皆が信じ始めたからかもしれんしな…」 学生間での嘘やデマの流通はとどまるところを知らない。むしろブッ飛んだ内容の 尾ひれが付くことの方が日常茶飯事なようである。 シンジは自分の実情を知りながらもうめいた。 「こんな…こんな無茶苦茶なことってないだろ!!!」 無論、あるに決まっている。 *** 〜NERV‐「税金浪費」の総本山〜 シンジは本気で悩み始めた。一体全体何が原因で神様は僕の人生をぶち壊し たがるのだ。 「何故、僕なの?」 彼は床タイルに問いかけた。ミサトが迎えに来るのを待ち始めてもう20分経つ。 その間ずっと床を眺めているうちに、ぽろりと口から出た言葉がこれである。さすがに 床に返答を期待していたわけではなかったが、仮に答えが返ってきてもシンジはおそらく 驚かないだろう。理由は簡単。 それ以上に不可解な目になら既にヘドが出るほど遭っている。 さっぱりわからなかった。アスカとレイの健康診断にかかった時間は全体通してものの 10分。だがシンジの番になった場合は、1時間半近くも長々と延長された。彼は最初 リツコさんは父さんの命令でそうしてるんだろう、と勘繰っていた。だが毎度彼の診断に 欠かさず同伴しているミサトとマヤに尋ねたところ、二人とも、単にあなたの場合は特別 だから、初号機を事前の訓練一切なしで高いシンクロ率を出した天賦の才を深く探るため、 というような回答を出した。そう、確かに他2人のパイロットに比べると、サードのエヴァ パイロットとしての技能は尋常でない勢いで発達していた。 「じゃあなんで、いつもいつも診査が終わるたびにやるせない気分になるんだろう、僕」 なんだか体中がヒリヒリする。ミサトを見つけに行こうと決意したシンジは、ネルフ本部と いう名の迷路で捜索を開始した。 碇少年の気づかぬところで、ネルフの廊下を歩く彼の跡を、並んだ全ての防犯カメラが しっかりとつけていた。その映像はデジタル回線を通じて街中のお得意様の家々でリアル タイムで放映されていた。 エヴァンゲリオンも木の根っこからぼんぼこ生まれる訳ではない。金の出所が必要である。 ゼーレが量産機に供給する予算をぎりぎり確保できたのも、SIC−シンジ・イカリ・チャンネル−の有料 サービス(月々¥9,995で見放題、PPVならお好きなコースが¥4,995)の上で成り立っていた のである。 *** 〜うんこちゃんな大魔王さまの根城〜 「で碇、どうするつもりだ?」 冬月コウゾウは本から目を上げると、ゲンドウの答えを待った。 「いつまでも逃げてはいられんぞ」 碇ゲンドウは机の上に積み上げられた書類と請願書の山をちらりと見た。 「『彼女ら』の様々な要求については熟考した。やる事も決まった」 さてさて彼の決断は正しいものであろうか。 「それは?」 冬月は急に心配になった。失敗の要素は幾らでもある。そして彼らのビジネスに おいては、1つの失敗が致命的な結果になりうることが多い。 「サードチルドレンは訓練室に移住させる」 数ある選択肢の中で、これが、全員に平等の権利を与えかつ内部からの反発を 最小限に抑えられる唯一の方法だった。ゲンドウは組んだ両手の裏でほくそ笑んだ。 こうすれば自分の責任は問われない。顰蹙(ヒンシュク)は丸々初号機パイロットが買う ことになる。 「春名氏の話とは違うが…」 冬月は俯くと、以前彼とした会話を思い出した。特殊金融機関重役の春名氏のスタンスは 実に明確であった。 「認められないなら殺すよ碇くん」 話し合いの余地はないようにも見える。 ゲンドウはそう簡単に怖気づきはしなかった。 「そういった類の申し出をしたのは彼だけではない」 見当は多少ついていたが、冬月は聞かずにはいられなかった。 「他に誰が?」 ゲンドウは書類の山をめくり始めた。 「葛城三佐の望むところでは、サードは元の場所に留まらせ、代わりにセカンドを移住させて ほしいとのことで、」 彼の目が用紙にいった。 「本人が言うに、『一生のお願いです。どうか 彼 だ け は ここにいさせてください。いや マジで』だそうだ」 「おそらく葛城君は、やはり自分は彼にとって大切な存在だということを自覚しているの だろうな。アスカはどうだ?どんな反応を示した?」 冬月はこの結果にはネガティブな予想しかできなかった。以前アスカが癇癪を起こした時は ネルフが破産しかけた程だ。彼女がどのような手口で、ネルフの口座にアクセスし享楽の限りを 尽くしたのかは未だ調査中である。 ゲンドウはこみ上げてくる震えをこらえながら言った。 「予想をはるかに超えて良い結果だよ。被害による死者数ゼロ、ケガ人もたったの8人だ。 彼女の唯一の主張は『バカシンジ』の所有権を自分に与えろのことで、なんと言ったか、」 ゲンドウはパラパラと大量の書類をめくった。 「ああ、ちまたの女性の安全を彼のヘンタイ行為から守る為、だそうだ」 自分の行動を認めずひたすら否定を続けるセカンドチルドレンに、冬月は笑いをこらえずには いられなかった。 「はっきり言ってしまえば、自分の大事な者を他から守る為、か。しかし仮に実現してしまえば、 彼の病院での生活時間がさらに増えてしまうだろうな」 「赤木博士も同意している。碇シンジの容態について何度も不安を聞かされたよ。先日自分が   保護を引き受けるべきだと要求してきた」 「んん?赤木博士のマンションは寝室は1つではなかったか?」 陰険な笑みが冬月の顔に浮かんだ。 「私は知らん」 ゲンドウは直ちに答えた。 少々早すぎたか。 「嘘をついてないかね」 冬月は防犯カメラがとらえた写真を取り出すとひらひらとゲンドウの前で振った。そこに写って いたのは、早朝某金髪の科学者の住まうマンションを去るネルフの某髭司令の姿だった。 ゲンドウは写真をひったくると跡形もなくビリビリに破いた。が、直後冬月にさらに数え切れない 量の焼き増しを突き付けられた時は、しばらく開いた口が塞がらず見ていることしかできなかった。 「…………伊吹二尉も本部に近接した彼女のマンションを提供している」 「そこも寝室は1つのはずだ」 今回出された写真には、腕ずくでも中に入ろうと必死に某ネルフ女性職員の部屋のドアを叩いている、 前述の金髪女性科学者の姿があった。 ゲンドウは、ただ言葉もなく、ポラロイドカメラが捉えた瞬間をじっと眺めていた。 受け取った写真を冬月はプライベート・コレクションの中へと戻した。 「他にいるか?」 「…………レイが……」 いまだに先程の暴露から立ち直れていないながらも、ゲンドウは机上からごつい紙の束を持ち上げた。 「レイがどうした?」 「請願書を提出してな…」 ゲンドウはリストを相談相手に手渡した。 ざっとリストに目を通した冬月は目を丸くして言った。 「随分と事情に詳しいように見えるが」 「私が馬鹿だった」 俯いたままゲンドウが言った。 「まあ、お前の命令には従っているじゃないか」 そう言って続くページをパラパラとめくってみた後、彼はゲンドウに説明を求めた。 「同じことが延々と書いてあるぞ。どういうことだ」 ゲンドウは机にもたげた頭を両手で覆った。 「 予 備 だ よ 」 くぐもった彼の声が答えた。 「ダミーシステムの…コア?」 冬月の眉がピクリと上がった。 「まさか碇、サードを共同利用させる気か!?」 レイの出願書類に絶対的な形で書かれていた、シンジの所有権に関する内容から察するに、 「あれら」が少年を得た時に彼が過労死する可能性は限りなく高い。冬月が動揺するのも 当然である。 「落ち着け、タンクなら封印してあるだろう」 ゲンドウ自身、プログラムの厳重な安全装置を有難く思っていた。レイのクローン達が 自分を好んでいなかったのも知っていた。ある経験上。 「そのことなんだが…」 冬月はどう切り出そうかと口をつぐんだ。 顔を両手で覆ったゲンドウは低くうなった。彼がもしまだ泣ける人間であったなら、 事務室は涙の海に沈んでいただろう。 「なんだよ」 「いや、赤木博士がまた、な。いい加減何とかしてくれんか碇」 冬月は後輩をそう怒鳴りつけた。彼にとっては、レイのクローンが新たに生まれるたびに 蒼髪を白く染めようと動くリツコがウザったくて仕方なかった。 「大学時代、赤木君が蒼と間違えてブロンドの永久染髪料を使ったのは彼女の責任だ。   俺は関係ないだろう」 ゲンドウも、 「大学時代に蒼く染めたいだけだった」 と自分に愚痴るリツコにはほとほと嫌気がさしていた。 「もういい。タンクはどこへ?」 「第二班に軍事施設の空いている区画に再設置するよう命じておいた。確か……ああ、   この辺りだな」 彼の指はネルフ内地図の「もはやおなじみの場所」を指した。 「そうか」 ゲンドウはさっさと別の話に移ろうとした。 が。 「待て冬月」 彼は改めて地図を見た。 「ここは訓練室の隣だぞ」 「そうだが…?」 冬月は今ひとつ要領を得ない。 「言ったはずだぞ、ここは広い上に完全に空き部屋だ。大いに我々の役に立つだろう」 「つい先程そこと同じ区画に再移住が決まったのは誰だ」 モーロク気味な相方に苛立ちながらも彼は聞いた。 冬月の顔が一瞬にして青ざめた。 「ヤッチマッタ…」 「ああ、よくやってくれたな」 ゲンドウが皮肉っぽく応じた。 「どうする?」 冬月が問うた。 「何を俺たちが気にする?サードには自立してもらう必要がある。状況に応じてな」 少なくともゲンドウはそれを望んでいた。というかこれまで彼はシンジを大して信頼 すらしていなかった。 「ではお前は、ただ1つ残された選択肢が、シンジ君を独り放り出して自活させること だとでも言うのか?」 冬月はこのような状況を継続させるゲンドウにただ驚きを感じていた。 「懲りん奴め」 そもそも初号機パイロットが鬱な少年である責任は、経歴から見ても完全にゲンドウにある。 冬月の付け加えた言葉はそのことも暗示していた。 「万一の場合に備え第二班に事前の損害回避対策を」 冬月の辛辣な言葉をゲンドウはさらっと流した。 「そして青葉二尉に連絡を」 「青葉君をか?彼なら『誰がサードを'モノ'にするか』で宝クジを経営していなかったかね」 当のクジはシンジが第3新東京市に住み始めた日から開業されている。今では特賞は、セカンド インパクト後残った沖縄一帯の南国諸島を文字通り丸ごと買い取れる額にまで膨らんでいた。 「ああ、そういえばそうだったな」 ゲンドウは、ネルフ内におけるギャンブルやら乱痴気騒ぎには見て見ぬふりをしてきた。主な 理由は、彼があらゆる全てのネルフにおける取引で幾つかの分け前を得ていたからだ。暗にいう ワイロという奴である。 「ナンバーワンよりオンリーワン」といった言葉が十数年前流行っていたようだが、なかなか どうしてトップに立つのも悪くない。 「で、お前は誰に賭けたんだ?」 自分の対象と比べようとゲンドウに揺さぶりをかける冬月だった。 *** ファースト・ミステイク  完            つづく…? あとがき ハイ、いちファンの糞小説、いったん終了です。予想以上に 評価良いみたいで感服の極みです。がFFに慣れてる方々が読んだら 「なにこの単調な文体」 と言われそうな出来っぽいんで、あんま舞い上がるのはよしときます。 こんな適当ゴミ作品でよければ反響次第ではまた続き書くかもです。 次の話ぐらいの構想は大体出来上がってるんで。 ではお付き合い有難うござんした パジャマタネ ノシ